高桑内科クリニック臨床工学科では、平成10年院内LANを構築したことに併せて、分散型コンピュータシステムの一つで、アプリケーションソフト、データベースなどの情報資源を集中管理する「サーバ」と、そのサーバの管理する資源を利用するコンピュータである「クライアント」が接続されたコンピュータネットワーク、いわゆる「クライアントサーバシステム」を確立しました。そして患者情報や検査、投薬、透析条件などの記録をデータベース化して管理を行う当院独自の透析業務支援システムを開発しました。市販のソフトを用いて自作することで、施設の需要に応じたシステム(無駄のない)を作ることができるほか、メーカー等の支援システムに比べ、コストパフォーマンス的にも大変優れています。近年、当院のようなサテライト透析施設においても患者さんは高齢化、重症化しております。したがってデータの一元管理は、写しなどの手書き作業の単純なルチン業務を減らすことができ、ヒューマンエラーを無くせるばかりか、空き時間を様々な患者ケアにまわすということが可能となります。
仕 様
患者基本情報 | 基本情報(氏名・性別・生年月日・住所) 病歴情報(既往歴) 連絡先情報(連絡先・家族構成) 転入転院履歴・入院・外来履歴 透析情報・血液感染情報 バスキュラーアクセス情報 保険者証情報 禁忌情報 |
|
機 能 | 検査管理 | 自動インポート・データ抽出、グラフ化機能 検査スケジュール管理・検体ラベル印刷機能 透析効率他、TACurea、PCR、GNRI、塩分摂取量etcの自動計算機能 |
体重管理 |
透析前、及び後体重は、体重計のRS-232C出力から、Accessにダイレクト自動入力 |
|
指示管理 | 透析指示(処置、注射等)の機能 検査指示(CTR、エコー等)のスケジュール機能 定期処方薬のオーダリング機能・薬剤情報説明書簡単印刷 |
|
透析準備 | 本日の処置リスト一覧・使用備品、薬剤出力 | |
透析記録 | 透析記録自動印刷(前体重測定時連動、目標除水量自動計算出力) | |
患者紹介 | 透析連絡表、診療情報提供書、検査履歴etc自動出力 |
システム機能紹介
検査データ自動インポート機能
当院では、血液検査関係は全て外注(株式会社BML)で行っており、測定結果は伝送プログラムを通じて送られてきます。本システムでは、それをテキスト化して抽出し、データベースに自動インポートする機能を持たせました。
蓄積されたデータはグラフや表にすることで、様々な角度から視覚的に分析できます。併せてデータから透析効率をはじめ、nPCR、CrINDEX、TACurea、GNRI、塩分摂取量、補正化Ca、鉄飽和率など様々な計算を自動的に行ってくれるので、診療支援に役立ちます。それ以外に希望のデータをEXEL等でに容易に出力できるので、看護師さんらによる受け持ち患者さんの管理にも適しています。また本システムは患者個人個人の検査スケジュール機能を有しており、その時々の項目別に検体ラベルを自動印刷してくれます。
体重データダイレクト入力機能
透析前後の体重測定については、各透析機器メーカーが販売している支援システムでは体重の自動入力などやってくれます。しかし一般的な透析室における体重測定は患者さんが自分で計って、それをプリント出力してベッドサイドで除水計算をするというのが基本ではないでしょうか。当院の支援システムでは、体重計(RS232C出力対応)の計測データを、直接、Accessにダイレクト入力することを可能にしました。患者さんは入室の際の手順は以下のようになります。
1、体重計横に設置した液晶タッチパネル上に表示した、自分の名前をタッチします。(透析スケジュール機能により管理されている本日治療を行う透析患者名が、パネル上に作られた透析室見取り図のベッド位置に表示されています)
2、体重計に乗ります。測定結果はシリアル通信にて画面に表示されます。併せて本日の基礎体重に対する増加量も表示されます。
3、透析記録印刷をタッチすることで体重、本日の目標除水量等が計算された本日の透析記録カルテが印刷されます。データは随時サーバに蓄積され、透析効率の計算などに用いられます。
指示管理機能(各種帳票出力)
「患者基本情報」、「注射・処置指示」、「定期処方薬指示」、「血液定期検査指示(スケジュール)」、「心・腹エコー、胸部X-P、心電図検査等指示(スケジュール)」などの指示が簡単なキー操作で可能。その指示は全ての帳票に反映されます。
主な帳票出力
基本情報関連・・「診療情報提供書」、「透析連絡表」、「透析記録」、「定期薬剤情報提供書」
※患者基本情報からの既往歴、定期処方薬指示からの定期薬リストは診療情報提供書、透析連絡票に反映する。透析記録に即座に反映される注射処置指示等は、特に注射日だけ透析記録に出力されるため、ESA療法(特にネスプ)の隔週注射指示などへの対応には便利である。処置リストも同様である。またエコーなどの事前予約済みな必要な検査はスケジュール入力により、検査日直前の透析記録にてお知らせしてくれるなどの親切設計としました。
検査関連・・・・「血液検査データ履歴」、「骨代謝評価報告書」、「貧血評価報告書」、「透析効率評価」、「バスキュラーアクセス管理(エコー画像)」、「血液検査検体ラベル出力」
※貧血評価レポートは鉄飽和率など自動計算を含めた最新のデータから、過去何カ月前(任意指定)まで遡って出力し、併せて現在のESA療法状況もレポート化してくれるので、診療支援におおいに役立っている。形は違えど骨代謝レポートにおいても同様である。患者個人個人の血液検査項目もスケジュールすることで、採血日に出力された検体ラベル=採血患者であり、それも項目別にシールで印刷されるので、それをスピッツに貼り付けるだけで検査落ちは防ぐことができます。